NIKKI

なんかお腹痛いなぁ…って思った時に書いてるブログ

西穂高とコントレイル

 

冬山登山の一番大変な、というか最大の障害はなんといっても道路の冬季通行止め。これに尽きる。夏は何回もいっていた蝶ヶ岳や燕岳への道は封鎖され、登山口にたどりつくにはなんの面白みもない峠道を2時間くらい歩かないといけなくなる。そりゃ、僕だって冬の蝶ヶ岳は登ってみたいけど、道路を2時間歩くほどかと言われればそこまでではない。だから冬は木曽駒のようにロープウェイである程度高い標高まで辿り着ける山にクソ高え金(3000円)を払って登るに留まっている。前回は木曽駒に行ったので、他にいい感じのロープウェイがないか調べてみると、新穂高ロープウェイというものがあった。実は松本から金沢の実家に帰るときには高速道路は使わずに、上高地を経由して岐阜県側から帰っているんだけど、ちょくちょく「新穂高ロープウェイ 40km手前」なんて看板を見かけていたから気になってはいたんだよね。40km手前ってなんやねん、と。で、詳しく調べてみると、このロープウェイは二階建てらしい。凄い。凄すぎる。しかも、ロープウェイから先は西穂高岳、さらにはジャンダルム、奥穂高岳への登山道になっていて、冬でも登山者はそこそこ多い。これはもう行くしかないぞ、ということで晴天が狙える土曜日に西穂高岳独標を目的地として登山をすることに決めた。

 

 

 

家から車を2時間ほど走らせてロープウェイの乗り場につく。まずは普通の一階建てタイプのロープウェイに乗って、鍋平高原まで。

f:id:hashimo02:20210328104842j:image

(写真撮ってないんで検索して出てきた画像で)

 

続いて、二階建ての第二ロープウェイに乗って西穂高口まで。

f:id:hashimo02:20210328105126j:image

(こっちも写真撮ってないんで拾った画像で)

 

二階建てにワクワクしていた僕だったが、一階の、しかも真ん中の方に立ってしまいあまり景色を楽しめずにロープウェイは終了。登山者というよりは、子連れなどの普通の観光客が多く、ロープウェイからの景色に感動しているようだったので、「おうおう、おめーらはそっからの景色だけで満足しとけや」と心の中で思いつつも、ほんとはめちゃくちゃ窓からの景色を見たかった。少し、去年住んでいた大都会東小金井を走る中央線を思い出した。

 

 

ロープウェイを降りて登山口に進むと、雪の迷路みたいな道から始まる。子供らが鬼ごっこをして走り回っていたので間違ってピッケルで殺してしまわないように気をつけて進む。

f:id:hashimo02:20210328105822j:image 

 

迷路を抜けると次は樹林帯に。少し北横岳に似ている。ツボ足でも歩きやすい。穂高ですら樹氷がもう消え去っているのだから、本格的に春が近づいてきたことを感じる。

f:id:hashimo02:20210328105949j:image

 

木々の間から覗く山脈もまた美しい。2本のコントレイル(飛行機雲)が際立つ。

f:id:hashimo02:20210328110230j:image

 

少し傾斜がキツくなってきたところでアイゼンを装着。クソ暑いので服も脱ぐ。下のハードシェルのベンチレーションがありがたい。おっさんたちがひいひい言いながら登っていく横を颯爽(ガウアウオ〜ッ(プシューッ))と追い抜かしていく。最近昼休みに頭文字Dを読みまくっているので、気分は中里のGT-Rのようだ。僕自身は四駆ではないが。

f:id:hashimo02:20210328110341j:image

f:id:hashimo02:20210328111003j:image 

 

40分ほど歩くと、西穂高山荘に到着。色とりどりのテントが羨ましくなる。日曜が晴れの予報だったら持ってきてたのになぁ。最近週末だけに雨予報が多くて困る。競馬の予想でも不良馬場ばかりで困る。

f:id:hashimo02:20210328111419j:image
f:id:hashimo02:20210328111416j:image

 

森林限界を抜け、ここからが登山本番。青空の下の縦走路がなんとも気持ちいい。雪質もスキー場のようなもうジャリジャリの水分の多いものではなく、からっとしたパウダースノー。やっぱ雪はこれじゃないとね。30分ほどで丸山に到着。ひいひいオッサンたちはここで引き返す。

f:id:hashimo02:20210328111801j:image
f:id:hashimo02:20210328111806j:image

 

 

この辺りは航空路になっているのか、飛行機の音がよく聞こえる。空には飛行機雲が何本もかかっている。この地に住んでもうすぐ1年が経つけども、1年前に羽田からの飛行機から眺めたアルプスの山脈を今は歩いているのかと思うと楽しいね。1年前なんて、自分が冬山登山をやるなんて思っていなかったよ。

f:id:hashimo02:20210328112407j:image

 

 

独標が近くなってからはかなりの急勾配に。手を使わないと登れないくらい。雪のない岩場をアイゼンで登るのは難しいし、ピッケルを岩に当ててしまってカーンと甲高い音を響かせるのも恥ずかしい。初心者感丸出し。だけど、こういう岩場を登ると登山やってるな〜感があって楽しい。ましてや気分はGT-Rなのだから。ネットでは独標までの道は怖いし危ないと書かれていたので、警戒していたがそこまでではなく普通に登れた。たしかに体力に自信がない人はやめといた方がいいとは思うけど。

奥にうっすら見える山脈が白山。小さい頃に何度も登った山だから今となっては感心を持てなかったが、めちゃくちゃかっこいいじゃねーか白山。こんなの見たら登るしかないね。また夏に行かなきゃいけない山が増えた。山に登ることで登りたい山ができる。これぞ登山の醍醐味よ。

f:id:hashimo02:20210328113553j:image

 

本来はここまでで終わるつもりだったが、時間も体力も余裕があるので、次のピークのピラミッドピークまで行ってみることに。独標から見上げるとなかなかに険しい。ピッケルとアイゼンを慎重に突き刺して進むが、さすがに怖くなってきた。下の写真を見ても、かなりの急勾配であることがわかると思う。もちろん落ちたら一発KOだろう。

f:id:hashimo02:20210328114208j:image

 

中里のこの名言を胸に4WD状態で進む。まさにGT-R

f:id:hashimo02:20210328114444j:image

 

安全なところから後ろを振り返ると、さっきまでいた独標が映る。空には新たな飛行機雲が。どこからきて、どこにむかうのだろうね、とか。ちゃんと窓の下みてるのかな?とか。少し考えてみたりする。

f:id:hashimo02:20210328114630j:image

 

さらに高度を上げていくと、独標がもうこんな下に。たぶん独標から15分くらいのところだったと思うんだけど、たったこれだけの時間でこうも景色が変わるなんてね。平日の15分なんてゴミみたいな価値観しかないのにな。

f:id:hashimo02:20210328114923j:image

 

危険箇所も何箇所かあったが無事にピラミッドピークに到達。西穂高岳へのルートを見て、こりゃ無理だわ、と思いながらコーヒーを飲む。

f:id:hashimo02:20210328115543j:image

 

一息ついたところで、下山開始。ここからが大事。登ってるときに薄々気づいてたけど、下山のほうが全然難しいんじゃねーか、と。嫌でも下の崖とかが見えてしまうから視覚的にも怖いし、体勢も安定させづらくて技術的にも難しい。写真じゃあまり恐怖感は伝わらないかもしれないけれど、途中では横断歩道の白線くらいの幅しかない道もあるし(しかも半分くらい雪庇になっていて危険。踏み跡ついてたからみんなそこ歩いてたけど、僕はちょっと難しくなるけど横の岩場を通った。雪庇が崩れて死ぬのは勘弁なので)、普通に怖かった。登山で恐怖を感じたのは初めて登った初冬の白馬岳以来で少し新鮮な気持ち。だけど、危険なところほど美しさも際立っていて。だから人は山に見せられて死んでいくのかなぁ、なんて思ったり。

f:id:hashimo02:20210328120424j:image

f:id:hashimo02:20210328120837j:image
f:id:hashimo02:20210328120830j:image

f:id:hashimo02:20210328121224j:image

 

 

穂高へと続く山脈。夏はジャンダルムを超えてそこまで行きたい。ハイマツ越しに見える笠ヶ岳も綺麗。こっちも行ってみたい。ほんとやりたいことだらけでどうしようもねえな!
f:id:hashimo02:20210328121218j:image
f:id:hashimo02:20210328121229j:image

 

 

危険箇所を抜けると後は気持ちいい縦走路。めちゃくちゃゆっくり歩いた。

f:id:hashimo02:20210328122042j:image

 

今回は久しぶりに実戦に温泉倶楽部ジャケットを使用。やっぱこれ、すごく使いやすいんだよなぁ。タンスに眠らせている倶楽部員の方々はもったいないんで使いましょうぞ。
f:id:hashimo02:20210328122039j:image

 

 

あっという間に山荘とテントたちが見えてきて登山も終了。今回は天気に恵まれて幸運でした。それに、岩場をアイゼンで歩く難しさもわかったし、冬山でも自分のレベルがそんなに高くないってことも分かった。危ないってことを怪我せずに分かったことが1番の収穫だね。自分の行けるところ、できることを見極めて、安全に山を楽しむ。それに尽きますな。下手くそがイキるのが危ないって、頭文字Dでも書いてあったから。

f:id:hashimo02:20210328122312j:image

 

f:id:hashimo02:20210328123219j:image

f:id:hashimo02:20210328123222j:image