NIKKI

なんかお腹痛いなぁ…って思った時に書いてるブログ

エロの真髄

 

結局の所、女子アナに思える。それもテレ朝などのキー局ではなく、ローカル局の三十代の女子アナだ。

僕の住んでいる長野県では、月一ほどのペースでゴールデンタイムに長野の美味しいお店を地元局のアナウンサーが巡る番組が放映されている。これが案外面白い、という訳ではないのだが、他の局はクイズ番組ばかりで興味もないし、家の近くの店でも紹介されないかな、と思いながら毎回最後まで観てしまうのだ。この番組を見始めた頃は、ご飯の特集ばかりでありきたりな構成だったのだが、最近は女子アナが温泉に入るようになり、少しお色気路線に走り出したのだ。ここまではどの地方都市でもよくある光景だと思うのだが、この番組のプロデューサーには、趣きがある。普通、温泉に入ってレポートをするのは入社したての若手女子アナの方が視聴率も伸びると思うのだが、なぜか三十代中盤くらいの中堅どころの女子アナばかりが風呂に入らされている。彼女らは淡々とレポートしながらも、

「え?なんで私が? もっと若い子の方が需要あるんじゃないの?」

という戸惑いの顔を隠すように湯に浸かり、一生懸命お湯の心地良さを伝えている。そのレポートには安定感があり、ベテランの風格が漂っているのだが、その奥には初々しい恥じらいも見え隠れしており、それがエロとなって滲み出ているのだ。

キー局のアナウンサーのように、欠点のない美貌ではないところも、また味わいがある。その辺のスーパー(ツルヤ)で買い物してそう感がリアリティを増幅させているのだ。普通にエノキを2パック買っていそうだし、柴犬と何かのミックス犬を飼って、「徳次郎」のような名前を付けてそうだ。たぶんディレクターからは、

「まだ結婚しないの〜?そろそろ貰ってくれる人いなくなっちゃうよ〜」

とか言われてそうだし、家で一人で鍋でも食べながら、そういう何気ない一言を踏みにじるかのようにスーパードライをガブ飲みしてそうだ。

僕は、心底からそういうタイプの女性が好きなのだが、結局のところエロとは想像だ。急に全裸の女性が目の前に現れたとしても興奮はしないけども、見えるか見えないかギリギリの短いスカートを履いたギャルや、胸の輪郭を強調するかのようなセーターを着ているOLを見かけると、金の玉が思わず光る。だから、コスプレ物のAVは永久に不滅だし、マジックミラー号は今日もどこかで走り続ける。

そんなことを考えるに、おそらく僕は三十代の女子アナというよりも、その日常生活が想像できるような、そういう女性のバスタオル姿に興奮しているに過ぎない。だから、特定女子アナのファンになることもないし、仮にAVデビューしたとしても買うことはないだろう。サンプル動画だけは一応見ておくけど。

この理論を応用するに、セックスレスの夫婦というのは想像力の欠如なのだ。男というものは(女は知らんけど)悲しいことに、既に知ってしまったエロについての興味は、反比例のように失っていく。それ故に、何年も一緒に暮らしている女性に対しては、服を着ていようと全裸になろうと金の玉の光り具合には関係がないのだ。

実際に、大学時代に二年ほど付き合った彼女と半同棲生活になったとき、我が玉は黄金の輝きを失っていた。澱んだビー玉のようだった。

「そういえば今週、一回もしてないじゃん」

そんな彼女の言葉がチクリと刺さったのだが、肝心の竿はピクリとも動かなかった。

そしてその時、僕は彼女に背を向けながら誓ったのだ。この理論を打破できる、セックスレス解消理論を構築できるまでは結婚しないぞ、と。二十二歳の時だった。

それから四年後の今、僕は三十代の女子アナに興奮してばかりで、一向に進めないままでいる。

 

スキー場での雑感

この冬はほんとよくスキー場に行っているのだが、ゲレンデというものは本当に疲れる。それは僕がふかふかのパウダーばかりを狙っているせいなのだが、降雪予報やリフトの運行状況、混雑具合などを加味して一番良いであろうスキー場に行き、リフト待ちをし、他の人の滑った跡がないようなところを選んで滑り、パウダーが無くなる前に忙しなく昇降を繰り返すのはやっぱり疲れるものだ。だいたいよく考えてみれば、僕がパウダー(非圧雪)やツリーランにハマったきっかけはゲレンデではないし、タダで誰もいない場所で好きなように滑るのが楽しかっただけに過ぎない。今シーズンに入ってからはバックカントリーでの滑りの上達のためにスキー場には頻繁に行くようにしていたが、なんだかもうそれもめんどくさくなってきた。そもそも人が滑った跡(ちょっと硬いし段差もあるし)を滑る技術と全くの新雪を滑る技術は違う気がするし、いくらゲレンデで上手くなったところで、安全第一の山でそれができるかっていうと、そうともいかないだろう(最低限はゲレンデで鍛えなきゃいけないとは思うが)。あとはなんといっても、実際のバックカントリーに行ってスケールの大きい自然地形の中を滑っていると、スキー場という人工的に用意された環境と安全が確保された状況で滑らざるを得ないのは面白味がない。別にスリルを求めて山に行っているわけではないんだけれど、下山した時の達成感だとか、地図と実際の地形を見ながらルートを考えている時の不安とワクワクの入り混じった気持ちだとか、結局はそういうもので僕は満たされているんだな、とゲレンデの荒れたパウダーを滑るほど実感する。あと金もないし。

まあ今のところはこんなことを考えているのだが、来月北海道に行った時にはどう思うのだろう。基本は羊蹄山でのバックカントリーを中心にするつもりだが、もちろんゲレンデも滑ってはみたい。そして、その時の気持ち次第で僕が数年後、どこに住んでいるのかは結構変わってくるのかもしれないな、と思う。

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最近グッときた曲たち

 

なんだか最近は良くも悪くも考え事をすることが多く、もやっとした日々が続いているので好きな音楽のことでも書いて気を紛らわせようかと思います。それにしても、考え事してるときに限って中途半端に興味をそそられるYouTubeの動画を見つけてしまうのは何なんですかね。今日は「千代の富士の超攻撃型速攻相撲」というタイトルの動画を見てしまいました。。

 

海辺のレストラン / サニーデイサービス 

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サニーデイがこの曲みたいな吹っ切れたロックンロールをやってるのを見ると、こんなおじさんになりてえなぁ、とつくづく思う。ベタベタのペンタトニックのフレーズとシンプルなドラムとベースの構成がもやっとする頭の中にグッとくるね!僕も50歳になってレスポールを弾いて「海辺のレストランでカレーでも食べよう」って歌詞を書けるようになりたいな。

 

ほれちゃった / CHAI

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この曲もシンプルな構成だけど、一個一個の音が際立っててめちゃかっこいい。なんかこういう曲こそ無性にリピートしたくなるんよね。声も歌詞も可愛いし!

 

Daddy's Diddies / チャールズ・ステップニー

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誰か知らんけどこの曲だけ何回も聴いてる。最初聞いた時は古そうやなーって思ったけども、意外にも2022年リリースの曲。歌詞は特になくて、ウォ⤴︎フフ〜って囁いてるのがほとんどだけど、それがクセになる。今年はこういう曲をもっと見つけていきたいなぁ。

 

Simple Step / Vulfpeck

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ずいぶん前から楽しみにしていたVulfpeckの新アルバムから。これぞVulfって感じの無駄を省いた構成に、熱めのAntwaunのボーカルはやっぱり相性がいいよね。それにしても今作のサウナ推しは何なんだ。彼らは日本でサウナが流行ってることを知ってんのか??

 

Never Gonna Be Alone / Jacob Collier

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Apple Musicの新作リストにジェイコブ・コリアーのこの曲があったらからとりあえず聴いてみたら、間奏のギターがめちゃくちゃいいのよ。なんというかジョンメイヤーっぽくて、ジェイコブ・コリアーもこういうフレーズ弾くんや意外やな、と思ってYouTubeでこの曲のライブ動画探して見てみたら、まさかのゲストギタリストとしてジョンメイヤーが弾いていたという。。改めてジョンメイヤーが唯一無二のプレイヤーだということを思い知りました。

 

Never Moved / Tom Misch

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朝の目覚まし代わりにこの曲を聴きがち。冬の朝って雰囲気があるのかな。それにしてもトムミッシュもそうだし、ジョンメイヤーもそうなんだけど、めちゃくちゃギター上手い人って必要以上にテクニックを見せびらかすようなことはしないし、一つのフレーズに使う音数も最小限にできるのがほんとすごいよなぁ。音の強弱とかピッキングのニュアンスとか、あとは音を鳴らしていない間の拍の使い方とか。年末年始に実家に帰ってギターを弾いていたら、母から「詰め込みすぎて迷走しとるわ!もっと音数絞って弾け!」と怒られたのを思い出す。でも、足し算ができるからこそ彼らは引き算が出来るわけでして。。何にせよ練習って大事ですねって話です。

 

ぬい / 君島大空

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最後です。この曲とこの曲が入ってるアルバム(映蔕する煙)を紹介したくて、この記事書いたようなもんです。いやぁ、久々に心の底からグッとくる曲が来たね。メロディーも歌詞もどっちも突き刺さるし、何回も何回も聴いても新鮮味は失われない。聴くごとに歌詞の解釈も変わっていくしね。君島さんはインタビューで消費されていくのが怖い、そうならないアルバムを作りたい、と言っていたけど、このアルバムが残らずに消費されてしまうようなら、いわゆるJ-Popというジャンルは衰退していくだろうね。とりあえず僕はそんくらいすごいアルバムだと思います。ぜひみなさん聴いてみてくださいませ!

 

(千代の富士の取組も素晴らしい)

人生の交差地点、天皇賞(秋)

 

コロナ禍で無観客になっていた時期を除いて、競馬を始めてからは必ず天皇賞(秋)は現地で観戦するようにしている。最も盛り上がるダービーや有馬記念は行ったり行かなかったりなのだが、この天皇賞(秋)だけは、必ず行くと決めているのだ。

そんな話を会社の競馬おじさんすると、「なんで?有馬記念の方がいいじゃん」と聞かれるのだが、時期や条件的に最も強い馬が集まりやすく、強い馬が強い競馬をして勝つような面白いレースになるからです。という僕の答えは半分正解で、もう半分の本音は別のところにある。

 


今年の天皇賞が行われる週末、僕は土曜日から競馬場に入り浸っていた。ビールを片手に紙馬券を握りしめているのだが、馬券を買った馬はスタートで出遅れ、最後の直線ではテレビカメラにすら映らない。それでもめげずに次のレースの予想をし、すぐさま券売機に三百円を投げ入れる。そしてその動作を、十五分間隔で繰り返す。まるで、大学時代に戻ったかのようだった。

就職してからは、競馬場には誰かと一緒に行くことがほとんどで、馬券の当たり外れを面白おかしく話せる人が隣にいた。けれども、今週末に限っては一緒に行くはずだった友人が結婚したばかりのドタバタで、急遽一人きりになってしまった。行きの特急電車の中では、それも悪くはないな、と思っていたのだが、いざこうやって十五分に一回、三百円を失うマシーンになってみると、心も冷たくなる。

やっていることは大学時代と同じなのに、どうしてこんなに楽しくないのだろう。的中率が低いから?いや、昔の方がもっと酷かった。ダート1400mの最後の直線、単勝で賭けていた圧倒的一番人気の馬が馬群から抜け出せないのを見下ろして、冷静に分析を始めていた。

 


バイトで稼いだ金を馬に貢いでいたあの頃、競馬場には酒くさいジジイ達がいた。お互いの名前もしらないで、いつもの机に、いつものメンバーで、いつものように馬券を外しているジジイたちが。毎週末のように自転車で通っていると、銀だこの近くにはハンチング帽を被った集団が、ケンタッキーの近くにはワンカップ大関を持った集団が、というようにそれぞれの縄張りを認識できるまでになっていた。ハンチング帽達は、かなり真剣に競馬に取り組んでいるようで、赤ペンを耳に掛け、最後の直線に入ると、「差せ」だとか「そのまま」だとか「戸崎!」だとかの声を上げていた。反対に、ワンカップ大関達は比較的穏やかな集団で、お互いの話に夢中になって馬券を買いそびれている姿をよく目にしていた。そんな中、ワンカップ大関はたまに話しかけてくることがあった。

「あんちゃん、何番の馬買ったんや?」

「三番です。」

「おお、ワシも同じや。あんちゃん頭ええのう。どこの大学や?」

「すぐ近くの大学ですけど。」

「おお、やっぱ頭ええんやな!ワシは中央大や!昔の中央大といったらな、今と違ってな…(略)」

「はぁ。」

そんな話を聴いている最中、三番の馬は出遅れ、馬群の中から抜け出せずに終わった。ワンカップ大関は、直線を迎える前にその場を離れ、持ち場の机で他の大関達と談笑していた。速い逃げ足だった。

本当にどうでもいいやり取りなのだが、あれから数年経った今でも昨日のことのように思い出せる。上手く言葉に出来ないし、する必要もないのだが、あれが学生時代で一番の社会勉強だったように思う。

一番人気だった馬券をゴミ箱に捨てて、あの時も同じようなレースだったよな、と懐かしくなった。そういえば、あのジジイ達はどこに行ったのだろうか。ケンタッキーはもう無くなってしまったし、銀だこも、若いカップルや家族連ればかりで、とてもあのジジイ達が入り込む余地なんてない。他の人が少なそうな場所も探してはみたのだが、ただハンチング帽を被っているだけのオジサンだけで、ましてやワンカップ大関を飲んでいる人などいなかった。きっと、コロナの影響で競馬場に入るのにもネット予約が必要になったせいで、来れなくなったのだろう。寂しいけれど、必然。そして、その寂しさが、僕が競馬を楽しめていない理由とイコールだったことにやっと気づいた。

ちょうど四年前の天皇賞(秋)。競馬初心者だった僕は、直前までどの馬に賭けるべきか悩んでいた。競馬場内をふらふらと歩きながら考えていると、ジジイ達の声が耳に入ってくる。

「ワシはスワーヴリチャードや」

「ワシもや!」

「スワーヴ以外、有り得ん!」

目を向けると、ハンチング帽達だった。当時、スワーヴリチャードは一番人気。結局、上位人気で決着が好きな彼らが推すのも納得だ。他の意見も聞いてみようと、ケンタッキーに向かうと、ちゃんとワンカップ達もいた。彼らの声に耳を傾けると、マカヒキ単勝、という単語がよく聞こえてきた。なるほど。単勝一本勝負な彼らにとって、三番人気のマカヒキが来ると、なかなかおいしい思いができる。両者の話を聞いた僕は、間を取って、二番人気のレイデオロに賭けることにした。

レースは、六番人気のキセキが逃げ、他の馬達が追う展開。膠着した展開のなか、四コーナーを回ってキセキが三馬身ほどのリードを保ったまま、最後の直線に突入。レイデオロは五番手あたりから必死に追い出すが、なかなか差は縮まらない。単勝馬券を強く握りはするのだが、残り四百メートルを過ぎたあたりから、目はキセキの走りに惚れてしまった。結局、ゴール間近でレイデオロがキセキを差し切り、騎手のルメールがガッツポーズを炸裂させるのだが、馬券が的中した喜びよりも、一円も馬券を買っていないキセキへの驚きが優っていた。

そして、今年の天皇賞(秋)。僕の本命は一番人気のイクイノックス。春の日本ダービーでも本命にしていたのだが、僅かに届かずの二着。あの直線の続きに期待して、今回も本命に推した。

大歓声のファンファーレを終え、ゲートが開かれると、七番人気のパンサラッサが逃げる。あの時のキセキのように、いや、それ以上に逃げる。後続との差はみるみる広がり、場内にどよめきが起こる。十馬身以上のリードを保ったまま、最後の直線に突入。必死で逃げるパンサラッサに、後方からイクイノックスが猛追。「行けー!」と叫ぶが、それがどちらへの声なのかは、もう分からない。だが、ちょうど僕の目の前に差し掛かったとき、イクイノックスがパンサラッサを交わす。そして、あの日と同じように騎手のルメールがガッツポーズを決める。その直後から、僕の心の中は、ぐちゃぐちゃにリフレインを繰り返していた。

 


その日の夜、東京に住んでいる昔の友人達と久しぶりに飲んだ。結婚式場探しが大変だとか、部活の顧問をするのが大変だとか、転職がどうだとか。四年前とは全く違う話題で盛り上がっているのが、おかしく思えた。

キセキやレイデオロワンカップ大関達がもう競馬場にはいないように、僕たちの立場も環境も、あの頃とは全く違う。無責任極まりなく勝手に夢を語っていた僕達は、もういない。だけども、記憶に残る逃げ馬がいたり、ルメールのガッツポーズのように、変わらないものもある。そして、それに救われる自分がいた。

だから行ったんだな、天皇賞(秋)

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裏路地歩いて菊花賞

松本城の路地を深く入った所に、なわて通りという飲み屋街がある。飲み屋街といっても、赤提灯を提げた小さいお店が数軒並んでいるくらいで、松本駅前の飲み屋街と比べてればずっと寂しく、人はほとんど歩いていない。秋華賞も終わり、特にやることもなかった土曜日の夜、松本駅からふらふらと歩いていると、吸い込まれるようにその通りに入ってしまった。こういうディープなところ、好きなんだよね。

いい店がないか物色していると、二、三分もしないうちに行き止まりになった。通り抜けができないタイプの通りって通りじゃなくね?と思いつつ、しょうがないので一番奥のお店に入った。

外からは一見、純喫茶の店のようにも見えたのだが、中身はゴリゴリの飲み屋で、ホワイトボードに書かれたメニューを見てみると、もつ煮、餃子、ウインナー炒め、納豆オムレツと、二軒目にもってこいなものが書かれていた。腹が減っていたので、餃子ともつ煮、生ビールを注文する。店員は、そろそろ還暦を迎えそうな、細いおばちゃんが一人で切り盛りをしていた。店内ではローカルなFMラジオが流れ、雑多な厨房でおばちゃんがさっそく片栗粉を溶いている。壁には色褪せたポスターや、祭りで子供たちが着けているようなお面が所狭しと並んでいて、まるで実写版深夜食堂のような店だった。

お通しと生ビールを空にすると同時に、もつ煮と餃子がやってきた。もう一杯、生を注文する。餃子はいかにも手作り、といった見た目で、冷凍餃子の味とはまた違う、この雰囲気に相応しい味がした。もつ煮もチェーン店のような味が濃すぎるものではなく、ちょうどいいペースでビールが飲めるものだった。

調理や洗い物が落ち着いた頃、「あなたどこから来たの?」と聞かれた。「住んでいるのはこの近くですよ。」と答えると、「あら、そうなの。でっかいリュック背負ってたから旅行の人かと思った。」「最近の夜は冷えるから、ダウンジャケットとか入っているだけですよ。」「そうね、最近冷えてきたもんね。」と、尻すぼみな会話が続いた。初対面でそんな話すことないよな、スナックでもあるまいし。と思っていると、「どうしてこんな奥の変な店に入ってきちゃったの?」とまた質問された。変な店の自覚はあるんだな、と感心しつつも「適当に歩いていたら行き止まりになってて。それでなんとなく入ってみたんです。」と答えると、「あら、そうなのね。」とこれ以上会話が続かないような返事が返ってきた。これでは面白くないなぁ、と「それと、今日の競馬でちょっとだけ勝って…」と付け加えると、「競馬ッ!!」と目を見開いて食いついてきた。「明日、菊花賞じゃない。何買うの?」「うーん、アスクビクターモアかなぁ。」「私はガイアフォース。」今までの他人行儀が嘘のように、会話が進む。そこからは競馬談義に花を咲かせ、思い出のレースだとか、馬券の買い方の話なんかをした。僕が、菊花賞で好走した馬は次の有馬記念でも馬券に絡みやすいですよ。と言うと、おばちゃんは直ぐに僕の言葉を紙に書き、すでにメモだらけの冷蔵庫に貼り付けた。なんて素直な人なんだろう。他のたくさんのメモも、全部競馬のことな気がしてきた。

そんなやりとりをしているうちに、店には常連さんがやってきて、あそこのラーメン屋が美味いだとか不味いだとかの話になった。

少し薄暗いけども、中は暖かい。こういうアットホームな飲み屋、(その分排他的かもしれないが)家の近くに一軒あると、それだけで週末が楽しみになる。いい店に出会えてよかった、としみじみしながら、店を出た。別れ際に、菊花賞で儲けたお金でまた来ますよ!と言った時のおばちゃんの笑顔がとても良かった。

結局、菊花賞の馬券は、僕とおばちゃんの二人とも外れた。もし、僕とおばちゃんの予想を融合させていれば…。いづれにせよ、多大なるダメージを負った僕は、気軽に飲み歩けない体になってしまった。なんとか次の天皇賞(秋)で的中させ、またおばちゃんに会いに行かなくては。

 

(本命は来るけど、紐の馬はこない。得意技です。おばちゃんはその逆。)

雨のおいしい町

たぶんこの町の雨はおいしい。360°山に囲まれ、そこから日本海に向けて川が流れている。車の量は多いけれど、あり得ないほどの高さのビルはないし、適度な田畑はある。ぶどう畑だってたくさんある。この町に降り注ぐ雨で育ったワインはとても爽やかな味がするし、米と水を使った日本酒だって濃厚だ。野菜も美味いはず。あんまり食べないから知らんけど。けれども僕は、ほぼ毎日を冷凍食品と社食のかけそばで凌いでいるし、りんごよりもフィリピン産のバナナをよく食べる。エースコックの美味そうなパッケージには騙されないし、冷食はテーブルマーク社を圧倒的に信頼している。そんな暮らしをこの町で続けて、はや三年。今年の夏は特に雨が多かった。しかも、なぜか週末ばかりが雨で、山に行こうとも行けない日々ばかりだった。この町に来た頃の僕だったら、イライラしていたんだろうけど、この雨だっていろんなおいしいものをつくっているんだよな、と思えば腑に落ちた。山に住む鹿や熊も、川に住むイワナやヤマメも。たぶんこの雨がなければ死んでしまうだろうし、彼らには土日とかないもんな。ボーナスもないだろうし。あっても、栗とかどんぐりだしな。いや、それは逆に羨ましいかも。そんなことを考えながら、家で競馬をして、アイスクリームを食べていたら、身体はふくよかになったし、財布は痩せ細った。

 

(冷食は結局、まぜそば。)

 

利尻島ホッケ祭りの旅①

 

食堂に向かって歩いているとき、橋本くんはゴールデンウィークは何するの?と同じ課のおじいさんから聞かれた。恒例の利尻島ですよ、と答えると、まじかよ〜羨ましいよ〜、一生で一回は行ってみたいんだよなぁ〜、と羨望の眼差しを向けてくれたので、贅沢な遊びをさせてもらってるんだなぁ、としみじみ思う。同年代であれば、実家に帰省するか、フェスにでもいくか、競馬場に行くくらいしか長期連休はやることがないと思うのだが、僕には"利尻島"という選択肢があることが嬉しい。山も海も、あたたかい人たちも。旧式のパチンコ台も。知らない人からすれば何もない島かと思うかもしれないが、"現地の友達" "現地の母" "スキー" "釣り竿" "40Lのゴミ袋" の便利な5つ道具を揃えておくだけでとても面白い島になるのだ!

 

4月28日

午前中、在宅で仕事をする。まず仕事の定義について考えたい。パソコンを起動し、Teamsを常にオンライン表示にしておくことを仕事と呼ぶのなら、僕は真面目に仕事をしていたと思う。書きかけの図面を開いたまま、部屋から車へ荷物を運ぶ。テント、焚き火台、テーブル、イス。結局使わなかったが。そうこうしている内にあっという間に12:30を迎え、僕は無敵の状態となった。そう、午後半休。一般社会よりもほんの少し早くゴールデンウィークに突入した僕は、颯爽と車に乗り込み、新潟港を目指す。冬の間にバックカントリースキーをするために何度も通った高速道路から見える山々は、雪がめっきり減っていた。初冬の頃に転けて失くしたスキー板もそろそろ出てくる頃合いだろう。探しに行かないと。約4時間ほど。ほぼ自動運転で新潟港に着いた。はやる気持ちを抑えられず、3時間ほど早めに着いてしまった。やることがないので、本を買ったり、去年の夏、同じようにフェリーを待っていた時に、その辺の鳩を集めてフリースタイルラップバトルを聴かせていた広場を眺めたりしていた。そんなことをしていると、あっという間に日は暮れ、乗船の時間となった。

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車ごと船に乗り込み、自分のベットに荷物を置くと、すぐさま風呂に向かう。フェリーのお風呂って結構いいんだよね。こんな感じ。

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これにサウナも付いているので、風呂上がりにはめちゃくちゃ美味いビールが飲めるようになっているのだ。ということで、しっかりサウナで汗をかいた後、外に出てサッポロクラシックをいただく。船の中はもう北海道なのだ。

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4月29日

午後5時。電波の通じない十数時間にも及ぶ暇を乗り越え、ついに北海道の苫小牧に上陸。長かった。フェリーの辛いところはスマホが使えないところだよね。飛行機もそうだけど。さっそく車を走らせて旭川に向かう。途中で見えた山がとても綺麗で、思わず登りたくなった。北海道の山は雄大で、アルプスとはまた違った魅力があるように思える。自分の足で登ってみないことには分からないだろうけど。4時間ほど運転して旭川に着いた僕は、さっそく飲み屋街を巡る。知らない街で一人で飲む時は、カウンターの隅っこで気配を消し、地元の人たちの会話を聴くのが好きだ。この日は、ゴールデンウィークだからか、誰々は旭川に戻ってきてるだとか、そうではないとか。そういう話をしていた。たぶん僕も金沢に帰っていたら似たような話をしてたんだろうな。二件目の日本酒BARで男女3:3くらいで旅行中の大学生グループとちょっと話したり、ドエロい店に入るかどうか迷ったり。旭川の街を少しだけ味わえた。
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4月30日

昨晩は遅くまで飲み歩いていたが、頑張って早起きをして、稚内を目指す。昼過ぎのフェリーに乗らなければならないのだ。それにしても北海道は長い。あと単調。ひたすらに直線道路と変わり映えのない景色が続くので、瞼が徐々に下がってゆく。眠くなっては車を停めて写真を撮って、を繰り返し、フォルダには後から見返さないであろう写真が溜まっていく。途中しばらく見えていた大雪山は圧倒的で、何枚も似たような写真を撮った。ん〜、この山は登りたい。

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やっと稚内港まで辿り着くと、荷物の準備をしなくちゃいけない。ここで車は置いていくため、これから数日間の、持てる限りの遊び道具を持って、フェリー乗り場にむかう。スキーセット。登山靴。ピッケル。釣り竿。同じフェリーにのる人たちから、こいつは何者?という視線を向けられながら、利尻島へと向かう。

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稚内から利尻島までは意外と近い。2時間くらいだ。天気の良い日は稚内から島が見えるくらいだし。意外と気軽に行ける島だと思うんだよね、利尻島って。船からは利尻島がだんだん迫ってくるように見えるのだが、その迫力が凄い。この船からの景色を見るだけでも利尻島に行く価値がある気がするな。

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利尻島に着くと、便利な5つ道具のうちのひとつ。"現地の友達"が迎えに来てくれた。壊れかけのパジェロに乗り込むとさっそく「今から行者にんにく取りに行くから」と言われ、斜面へと連行された。島について30分も経たないうちに山菜取りが始まる。とりあえず今日食べる分だけとればいいよ、と言われたので、レジ袋一袋分ほどを採り、我々は温泉へと向かった。ホテル利尻の温泉は、ふるさとサポーターなるものに申し込んでおけば無料で入れるので、利尻に行かれる方はぜひご活用ください。詳しいことは全部"現地の友達"がやってくれたので、僕は何も知らないが、なんかをいい感じに申請すれば↓のような券がもらえて、↓のような温泉に入り放題となるのだ。

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夕陽を眺めながら露天風呂に浸かっていると、現地の友達がお風呂の掃除をしているお兄さんに話しかけられていた。「今日の夜イカ釣りに行くからよぉ、9時半くらいにとりに来なよ。いつもの漁港に。」この距離感が利尻島なのだ。現地の友達とお兄さんは友達っていうほどの間柄ではないし、お互いの名前もよく知らない。なのに、こうなる。食べ物は偉大だ。

風呂から上がった我々は、便利な5つ道具のうちのひとつ。"現地の母"であるマキちゃんの店に行者にんにくを携えて向かった。マキちゃんは去年の夏に利尻島でウニ・アワビフィーバー旅をしていた時に、我々にご飯を作ってくれたりと大変良くしてくださった人だ。僕たちが書いたエッセイ本も読んでくれていて、僕のことを「先生」と呼んでくれている。それにしても、あの本を読んだ某大学の教授からは「ベストセラー作家」と呼ばれていたりもしているので、なんだか自分が凄い人間になった気がして偉そうになってしまう。やっぱり本のクオリティーはどうであれ、ブログのような電子的なものではなく、ちゃんとした本として作ったのが良かったよな、と改めて思う。そんなことはさておいて、島に着いて30分で採った行者にんにくをマキちゃんに天ぷらと炒め物にしてもらった。めちゃうま〜い。自分で採ってきた物を人に作ってもらって食べるのは最高だなぁ。怠惰な自分に乾杯だ!マキちゃん、ありがとう。

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9時過ぎに店を出て、我々は漁港へ向かう。港では何台かの車が停まっていて、数人が海面を明るく照らしていた。産卵のために湾内にやってきたイカを光で集め、それを針でひっかけて釣るそうだ。車を降りて明かりに近づくと、温泉のお兄さんが「いやー今日はあんま釣れないわ」と言って、イカを1杯くださった。「1杯しかあげれなくてごめんね。ほんとは人数分あげたかったんだけどね〜」いやいや。どれだけ優しいんだ、この人。それとももう飽きるほどイカ食ってんのかな。両方か。

イカを手に入れた我々は、現地の友達の家に入り、さっそくイカを食べる。さっきまでその辺にいたイカだ。美味くないわけなかろう。サッポロクラシックも今日何本目だろうか。利尻に着いて数時間しか経っていないのに、こんなに楽しく、美味しいものに囲まれて。おらぁ、幸せだぁ〜ʅ(◞‿◟)ʃ  (その②に続く。。)

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(なかなかホッケのところまで辿り着かん…)