NIKKI

なんかお腹痛いなぁ…って思った時に書いてるブログ

最近の個人的音楽動向

 

九州に引っ越して1ヶ月ほど経ったが、音楽系のバーが(人口比で)とても多いと感じる。僕が住んでいる小倉もそうだし、登山の帰りに寄った大分の街にもディープなバーがあった。イカの活き造りを食べた後に都町(金沢における片町、長野市における権藤的な)を歩いていると、ミュージックバーと書かれた看板を見つけた。それに引き寄せられるように階段を登り、重厚な扉を開けてみると、暖色系の薄明かりの中で何 何本ものギターが壁に立てかけられており、店の奥にはドラムセットとアンプが置かれているのが見えた。ガチじゃん、ここ。

客は僕1人で、しばらくヨボヨボなマスターと還暦ほどの細いおばちゃんと話していると、いかにも常連といったようなオッサンが入ってきた。

「新しいベース買っちゃったんだよね。マスター、これそのアンプで弾いてみてもいい?」

そう言って、オッサンはさっそく背負ってきたギターケースを開いてシールドをベースに刺した。店内にはライブハウスのような重低音が鳴り響き、そのベースやアンプが本物であることが伺えた。オッサンはいくつかのフレーズを弾き、マスターが褒め称えるというやりとりが数回あったのち、オッサンが「兄ちゃんもギター弾くなら一緒になんか弾こうよ」といきなりぶっ込んできた。内心「え?いいの?」という戸惑いと「弾けるもんなんてねぇぞ…」という恐怖を抱きつつも、せっかくなのでじゃあ、と目の前にあったストラトを貸していただいた。僕のコード弾きのレパートリーなんて数種類しかなくて、しかも確実にJ-POP的なアプローチが許されない今回に限っては、ナイルロジャースのI'm Coming Outか、ジョンメイヤーのWaiting On the World to Changeくらいしかない。とりあえず前者のカッティングフレーズを弾いてみると、オッサンが僕の手元を見ながらベースを合わせて弾いてきた。めっちゃすごい。そんで、楽しい。誰かと合わせて弾くなんて正直初めての体験だったから新鮮で、こんなにワクワクするものかとビビった。だが残念なことに、一貫性のあるプレイができない僕は、ちょこちょこミスってしまい、リズムがブレる。あぁ、日々の基礎練習の大切さはこういうところに出るんだな。もっと地道に練習せんといかんよな。楽しくて悔しい、なんとも不思議な気持ちだが、こんな体験がふらっと入ったバーで出来るなんてね。

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小倉にはGoogleで調べたところ、そういった様子のバーが数軒見つかった。どこに行こうか迷ったが、一番ディープそうな、扉の取手がギターのネックになっているバーに入ってみることにした。ネックを引いて店内に入ってみると、やはり常連の客が数人いて、若い僕を物珍しいそうな顔で見てきた。マスターはその人たちからひと席開けた椅子の前にコースターを置き、注文を聞く前に、「なんでここに来たの?普段何聴いてんの?」と質問してきた。面接かよ。

「いやー、扉のネックが気になっちゃって」

「ふーん、じゃあギター弾くんだ。で、何聴くの?」

「そうですね、ほんと趣味でゆるく弾いてるだけですけど…。普段聴いてるのは、ジョンメイヤーとかジミヘンとかそういうゴリゴリのロックも好きですし、R&Bだとプリンスとかディアンジェロも好きですね。」

舐められまいと必死に回答をしてみたところ、

「ジョンメイヤーか、良いの聴いとるな。その年でそんなんばっか聴いとって、自分友達おらんやろ?」

「確かに友達は少ないですけど…」

「そやろ?そんなシャツのボタン一番上まで閉めてそんな音楽聴いとる奴と心通じるやつなんか同世代におるわけないっちゃ。可哀想やし席移動してこっち来い!」

そうやって僕は常連ゾーンに吸収されてしまった。そこからはなぜそんな音楽を聴くようになったかの話や、シャツのボタンを一番上まで閉めるのはオシャレなのかどうなのかの話で盛り上がった。なんともマダムな感じのおばさんは「いいじゃない。彼、カッコいいし、最近はボタンを上まで閉めたほうがスッキリしておしゃれなのよ。」と何度もフォローをしてくれたが、マスターを始めとした汚ねえ親父連中は「そのくるっとしたパーマ?みたいな髪型も友達いなさそうだよな、ハハハッ!」と高笑いを辞めなかった。そして、テンションが上がりきったマスターはアコギを膝に抱えて急に音を鳴らし始め、その繊細なストロークからジミヘンのLittle Wingを奏でた。上手いし、音もいい。相当昔から弾きこんだ曲なんだろうし、ギターもギブソンのビンテージ物なんだろうか。まあ、とにかく渋くてカッコいい。そうして僕は上機嫌になったマスターと常連たちに肩を組まれ、次なるミュージックバーへと連行されていった。解放されたのは深夜3時のことだった。

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名古屋・大阪とTHE 1975のライブに行った。チケットをだいぶ前に買っていたのを忘れていたせいで、直前になってからいろんな人に一緒に行こうと声を掛けたが、結局1人で行くことになった。あのオッサンたちに知られたらめちゃくちゃバカにされそうだ。あのエレクトリックかつロックな音はライブだとどういう風に聴こえるんだろうか、そして彼らはどういう処理・アレンジをしてライブをするんだろうか。それが気になって2回もライブを見に行くことにした(と思う。半年前の自分が。)

実際聞いてみると、やはり音(特にベース・サックス)には迫力があったし、Sincerity Is Scaryでのリズムのもたれを生み出すドラムの演奏はとても良かった。けれども、というか、しょうがないところではあるんだけど、同期音源と合わせるためにその場限りでのアドリブとかそういうのは基本的にはなかった。なんというか、ここ最近のバーでの触れ合いだとか、ジョンメイヤーのプレイへの崇拝などもあり、客の反応やその時のメンバーのノリに合わせたギターのプレイとかがないと面白くないよなぁ〜と思ってしまう。

そういう自分の傾向を考えるに、最近は曲というよりもギターという楽器をもっと聴こうとしているんだろうな。競馬というレースを見るよりも、イクイノックスやリバティアイランドといった馬を見る方が楽しみになっているみたいに。

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