NIKKI

なんかお腹痛いなぁ…って思った時に書いてるブログ

天津炒飯について考える

 

ある仕事終わりの夜。たまには店で何か食べたいなぁと思っていたし、その日はものすごく中華の気分だったから、餃子の王将に入ることにした。店内は客がまばらでなかなかに厳しいことが伝わる。颯爽とおひとり様で4人用ボックス席に座った僕は、メニューを開き、皿うどんにするか、天津飯にするか迷っていた。わりかしあんかけ系の食べ物が好きな僕は、だいたい王将では皿うどんを頼む。なんなら今日の昼飯も冷凍食品の皿うどん。ただの野菜炒めや回鍋肉よりも八宝菜の方が好きだ。ただ、この日はなにぶん腹が減っていたので、もう少し食べたい。餃子はもちろん頼むとして、ミニ炒飯でも頼みたいところ。だけど、皿うどんと餃子とミニ炒飯を一人で全部食べるのも罪悪感があって、少し躊躇する。天津飯とミニ炒飯にすると、ご飯ものが被ってしまって完璧なオーダーとは言い難い。席に着いた瞬間に注文したドデカハイボールを喉に注入しながらメニューを巡っていくと、この店オリジナルメニューの天津炒飯というものを見つけた。この言葉通り、天津飯のご飯部分が炒飯になったものだ。なんと素晴らしい。僕はもう、これしかないと思った。即座にボタンを押して店員に「天津炒飯と餃子一人前。あ、あとドデカハイボールも追加でお願いします。」と注文した。それから待つこと数分。念願の天津炒飯が到着。天は炒飯の上に天津を造らず、天津の下に炒飯を造らず。とは、かの有名な福沢諭吉a.k.aあんかけ魂 が言ったとされる言葉で、今では小学生でも知っている名言だ。その言葉をブチ破った、目の前の一品。さっそくレンゲで中の様子を見てみると、卵の下にはなんの変哲もない炒飯。さっと見ただけで、餡の味に合うように、なんて工夫はまったくされていないであろう炒飯。そうそう、こういうのでいいんだよ。調整やチューニングなんて要らない。ただ炒飯に卵とあんかけを乗っけてくれればいいんだ。勝手に一人で納得しながら、あんかけをたっぷり乗せたものを口に運ぶ。美味い。すぐさま左手はドデカジョッキを掴み、ハイボールを体内に補給。良い。このジャンキーな感じが。愛してるぜ王将。

3口/minのスピードで半分ほど食べ終わったところで、なんとなくこの味に飽きてきたのか、ひとつの疑問がよぎる。おれは、何を食べているんだ。炒飯を食べているのか、天津飯を食べているのか。メインはどっちなんだ。口に入れるたびに舌で感じる味の軸が天津飯と炒飯を行ったりきたりして、非常に不安定。その直後にやってくるハイボールも、天津vs炒飯の戦場と化した舌上を完全に洗い流すことはできない。そこにさらに餃子もやってくるもんだから、もうてんやわんやですわ。我が舌に「美味しいですか?」と聞いてもまるでSiriのように「よくわかりません。至急、ハイボールを投入してください。」としか返事が来ない。そこからはもう、義務感でしか食べれなかった。

王将を退店後、細長いビルの3階にあるクソみてえなスナックに行き、30代後半と思われるクソみてえなママに天津炒飯とは何ぞや、という話を延々とし続けた。1時間鏡月飲み放題で3000円で。鏡月もクソ不味かった。ママは、突然現れた初見の客が天津飯と炒飯を合体させることについての罪について語り続けるのに困惑をしながらも、流れを変えようと元旦那の束縛がいかに厳しかったかの話を突然吹っかけてきた。だけども、そんな話にはまったく興味がないので、僕は一言だけを返して去った。「天津炒飯みたいなもんですよ。あなたが炒飯で、元旦那が天津。合うように見えて、合わなかっただけ。最初の一口は美味しいんですけどね。」

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(そのスナックのババアはワゴンRに乗っていて、ちょっとした山道のことをやたら"峠"と呼んでいた。)